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◇葉山町消防本部◇(神奈川)

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葉山町は三浦半島の西北部に位置し、北は逗子市、東・南部を横須賀市に接し、西は相模湾に面している。面積は一七?q、人口三〇、〇○○人余で、町の西半分は市街化されている。四季折々の山並みの変化もさることながら、富士、箱根を借景とした海浜の眺望はまさに絶景で、温暖な気候とあわせ高級リゾート地として栄えている。
葉山が保養地として注目されたのは、明治の始め、イタリア公使とドイツ人医師の二外国人が推奨したためとされている。特にドイツ人医師は、明治天皇の待医を勤めた人で、医学的見地から保養に最適の地と宣伝したという。明治二七年に葉山御用邸が建設されたが、相前後して名士の別荘が次々と建てられ、昭和九年には四三二戸を数えた。戦後、漏電火災で大半を消失、現存するものは少ない。
♪御用邸消失にショック
消防本部の設置は、昭和四三年、職員二一名。現在は高木消防長以下四七名が防火防災に当たっている。発足間もない昭和四六年御用邸より出火、隣接本部の応援を受けての消火活動も空しく、総檜造、三、七八八?uを全焼、職員はもとより住民は大きなショックを受けた。これを機に逗子・葉山地域の各本部では相互に連携を強め、南関東地震等が危惧される現在、広範囲の防災対策に取り組んでいる。現在の御用邸は、五六年に再建されたもので、大正天皇の崩御、皇位継承、「昭和」の元号誕生もここ葉山町の歴史に刻まれている。
♪ハーレーパレード
火災予防運動の目玉は、ハーレー同好会の協力による恒例のパレード。広報車の先導で、サイドカー付のハーレーダビッドソン五〜一〇台に消防車が続く。マニアならずとも羨望の車、広報効果の方でも絶大である。
一方、逗子・葉山地域には、終日放送で大衆から人気の高い「湘南ビーチFM」がある。非常時には、この電波を利用し、消防本部から緊急強制割り込みを行い、可及び消防本部等の正確な情報を伝達する。新庁舎には専用放送室を確保した。また、町では災害弱者用に、ワンタッチチューニングのFMラジオを無料配布している。
♪新庁舎で心機一転
防災拠点として本部庁舎の一期工事が完成、五月から業務を開始した。二期工事の竣工は一一月。地下一階、地上三階、延一一五二五?uで、外観からはとても消防庁舎とは思えぬ斬新さである。(写真)二〇年後を基準としたとあって、内部は一見余裕が感じられる。設計にあたっては、全職員が提案、検討に参加、その意見が盛り込まれている。二〜三紹介すると−
三階通信指令室=地図検索ディスプレイ、障害者用ファクシミリ受信機、防火衣等収納室と双方向テレビ、指令用ファクシミリ、隣室に通信専従員の仮眠室を設置。
仮眠室=各ヘッドを二mの壁で区切り準個室として、可動式照明と床下に収納庫を設置。天井は光の拡散防止に暗緑色とした。
その他車庫上階の軽量化、車庫棟・事務棟の空間にグリーンゾーン、救急隊員消毒室等随所に工夫のあとがうかがえる。さらに玄関の円形ホールには消防隊員服を着たからくり時計を置き、遊び心も採り入れる予定である。

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♪勤務環境整う
管内四つの海水浴場には、毎年五〇万人程の人出がある。昨年は水難事故も少なく、他の災害も特記すべきものはなく安堵している。新庁舎完成後は、はしご車・救助工作車・高規格救急車等装備の充実強化を目指し、人材育成は普遍の課題としている。高木消防長は「意思の伝達」をモットーとし、「お互いに考えているだけでなく、必ず確認し合い、物事に対処していく事が大事である」という。
環境の整った今、職員の心意気を見せる時が来た。(海老原光三)

 

 

 

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